営業部だより

営業部

◆早いもので2009年も残りわずかとなりました。今年一年の営業部の活動を振り返ってみたいと思います。不況に強いと言われる出版業界ですが、今や、厳しい状況下におかれています。小社も日々、返品の大波小波を受け続けています。この状態を突破する策は何かと考えながら、今年も都内や地方の書店を訪ねてきました。また、学会での書籍販売では、多くの先生方に足をとめていただき、小社の本を手にとっていただきました。時には、新しい企画について編集部員とお話いただくなど、たいへん貴重な機会でした。
◆小社は、版元が横の繋がりを活かした営業活動を行う会に加盟しています。専門書販売研究会、若葉会、NR出版会、平和の棚の会などです。これらの会は、それぞれ独自のスタンスで「いかに本を売るか」をコンセプトに、活動をしています。
◆例えば、「専門書販売研究会」では、大学生協、ジュンク堂書店を中心に、年数回「専販研フェア・はじめてみる本はみな新刊」をスローガンに、店頭でのフェア展開をしています。
◆「若葉会」では、「出版業界の勉強会」として毎月、書店、取次、ネット関係の方などに講演をしてもらっています。
◆「NR出版会」では、年二回、参加版元が売れ筋三〇点を持ち寄り、書店でのフェア展開をしてもらっています。また、書店の現状や出版・販売をめぐる情報交換をします。地方書店への営業と交流を目的とし、年一回の合宿も行っています。これまでに福岡、新潟、鳥取・島根の合宿に参加しました。今年は神戸で、海文堂書店、喜久屋書店北神戸店にうかがうことができました。
◆「海文堂書店」は、創業以来百年近く続いている老舗です。「賀集書店」として出発し、海事図書の出版を手がけた歴史もあります。数々の苦難を乗り越えてきたなかで、あの阪神・淡路大震災に遭遇しました。幸いにも被害は軽微で、多くの町の書店が閉店していくなかいち早く営業を再開し、神戸の人々とともに今日まで歩んでいます。ご当地の雑誌や書籍、「海の本」コーナーには海図や船の模型なども展示しています。トークセッションやサイン会などの催しも行っているそうです。
 最近の書店は、大型化し、郊外のショッピングモールや駅ビルの中など便利な立地で、圧倒的な品揃えをする店が増えています。一方で、昔ながらの町の書店は、閉店を余儀なくされています。海文堂のような町の書店は、みなさん本当に工夫をされていて、私たち版元にも、とても良い勉強の場なのです。
◆「平和の棚の会」には、昨年から参加しています。ジュンク堂書店新宿店のS氏の、「平和」をテーマに他店にない品揃えをしたい、との話から始まりました。ニートやドメスティックバイオレンス(DV)、ジェンダー差別、パワハラも、すべて「平和」の問題です。その話に賛同した販元20数社が参加しています。各版元の「平和」に関する本を集めたリストをもとに、これまでに、全国14の書店で「平和の棚」フェアを展開しました。この中には常設の棚として継続していただいている書店もあります。
◆10月1日にはジュンク堂新宿店で、トークセッションの機会をいただきました。「平和運動にかけた大工さん」のテーマで、『庄幸司郎 たたかう戦後精神──戦争難民から平和運動への道』の編者・松本昌次さん(影書房代表)と澤田章子さん(文筆家)の対談を行ないました。庄さんという一人の人間が、どのように戦後を生き、平和運動にかかわってきたかが、熱く語られました。「平和の棚の会」一周年記念・連続トークセッションの第一回目です。こうした取り組みで、読者のみなさんに興味を持っていただくことも重要だと考えています。
◆6月に刊行した『本庄事件──ペン偽らず』(朝日新聞浦和支局同人著/栗田尚弥解説)。本誌「神保町の窓から」でもたびたび紹介してきた本です。埼玉県本庄で戦後すぐに起きた青年たちによる町政刷新運動を描いています。当時は町を二分するほどの運動でした。『暴力の街』(山本薩夫監督、1950年)のタイトルで映画化もされ、池部良や宇野重吉が出演しています。本庄市を中心に、チラシ、ポスター、POPを持って回りました。どの書店でも平積みし、ポスターも貼って下さいました。おかげさまで本庄市では、ちょっとしたベストセラーになりました。
◆来年も、さらなるご支援をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。 (K村)