神保町の交差点

●1948年、日本出版配給株式会社〈日配〉を母体とした日本出版販売(日販)と東京出版販売(トーハン)が創業した際に、取扱品目を分けたことから、今なお「書籍」の日販、「雑誌」のトーハンと呼ばれています。大学生協、紀伊国屋書店や丸善ジュンク堂書店など多くの老舗を持つ日販は、専門書版元にとって、とても重要な取引先です。
22年10月、トーハンから帳合変更のお知らせが届きました。12月から丸善ジュンク堂書店32店舗の取引を日販からトーハンに変更する内容です。これですべての丸善ジュンク堂書店がトーハン帳合になります。
先日、今はアマゾンなどネット書店を顧客に持っている日販のここ数年の売上内容を確認すると、2月、3月、9月のテキスト繁忙期を除く、じつに九か月間の売上の六割強がネット書店であることに気づかされます。全国の書店数がこの20年でほぼ半減する中、数年前では考えられないほどの占有率です。今回の帳合変更で版元の反応はいろいろとありましたが、「これからは「リアル書店」のトーハン、「ネット書店」の日販になるな」という印象が残ります。

●11月14日、京都大学名誉教授下谷政弘先生が永眠されました。8月末にメールでやり取りした際の「時節柄、健康一番にお過ごしください」の一文が最後となりました。下谷先生とお付き合いさせていただいて、形となったのは『新興コンツェルンと財閥』(2008年)が最初になります。その後も『経済学用語考』(2014年)や、研究者人生と福井県立大学学長として過ごした8年間をエッセイ風に書き綴った『随想 経済学と日本語』(2016年)、当時担当編集者であった谷口から、「『経済用語考』には肝心の「財閥」が抜けています」と宿題を出されたことが気になり、住友史料館館長在職中にご執筆された『いわゆる財閥考』(2021年)などがあります。最後の本の編集期間中、コロナ禍にもかかわらず、先生は二度小社まで足を運んでくれました。「住友史料館は長きにわたり「開かずの門」となってきたが、これからは多くの研究者を迎えられるよう私が取り組んでゆかなければ」という意気込みを語られておりました。下谷先生が取り組もうとされていたことが止まぬよう願うばかりです。

●「評論」224号で「本間義人先生を偲んで」で追悼文をご寄稿下さった木下聖先生(埼玉県立大学)が12月27日に永眠されました。心よりご冥福をお祈りいたします。 (僅)