「市民社会」と共生

「市民社会」と共生

東アジアに生きる

  • 著者:古川純編
  • 定価:3,300 円
  • ISBN:978-4-8188-2215-3
  • 判型:A5判
  • 頁:296頁
  • 刊行:2012年05月
  • ジャンル:社会・政治人文・社会

内容紹介

市民社会は「個人の尊厳と人格の平等」を基本とした個人の相互依存による諸関係として形成される。東アジアに生きる私たちの諸隣国との「共存」を基礎づけるコンセプトとは。

目次

はしがき 
1 スミス・マルクス・グラムシと「市民社会」……鈴木 信雄
はじめに
1.商業社会としての市民社会
2.マルクスの市民社会認識と市民社会派マルクス研究
3.グラムシの市民社会論の先駆性
2 変革の主体としての社会
──「社会をつくる」思想の源流と歴史──……山田 勝
はじめに
1.3・11大震災と市民の社会形成の経験──「助け合う社会」の出現──
(1)非常時に再生した大震災の経験とボランティア社会
(2)復興にも活きた市民の信頼と輪
(3)「日常社会」が「非常時社会」を拒否し、排除する
2.「災害ユートピア」──震災時のボランティア経験の普遍的意義は何か?──
3.いま、改めて〈社会〉を問い直す
(1)“社会の発明”と近代市民革命
(2)社会の発見(経済社会=市民社会)と経済学の功績
(3)ヘーゲルとマルクス──「空想から科学へ」の功罪──
(4)封印された「空想的社会主義」の社会思想=協同の思想
(5)コミュニティーの再発見:市民社会と共同体社会について
4.日本の社会像と世間論の意義
(1)〈世間〉とは何か?
(2)個人の成立と近代への2つの道の分岐
(3)日本の社会の特徴をどう見るのかという問題
(4)個人を取り戻す道はあるのか──〈世間〉と闘うこと──
3 「新しい市民社会」形成と日本国憲法の課題……内藤 光博
はじめに
1.伝統的「市民社会論」の2つの系譜
(1)「市民社会」の歴史性
(2)伝統的「市民社会論」の2つの系譜
(3)戦後日本の「市民社会論」の特質
2.1990年代の「新しい市民社会論」の登場
──ハーバーマスの「市民的公共圏」論を中心に──
(1)「市民的公共圏」と「新しい市民社会」
(2)討議民主主義と「新しい市民社会」論
(3)ハーバーマスの「新しい市民社会論」に対する評価
3.日本の民法学における1980年代以降の2つの市民社会論
(1)広中俊雄の市民社会論
(2)星野英一の市民社会論
(3)小活
4.市民社会形成と日本国憲法の課題
(1)日本における「市民社会」の形成と日本国憲法
(2)市民社会形成と日本国憲法の課題
おわりに
4 民法における家族と市民社会──家族の個人性と団体性──……木幡 文徳
はじめに
1.わが国の民法における家族
(1)明治民法における家族
(2)現行民法における家族
2.夫婦別氏論議の検討
(1)はじめに
(2)氏の団体性
(3)氏の身分性
(4)氏の性格の変容と氏の慣習的受容
(5)家族法の基本理念と夫婦別氏論議
(6)別氏論と同氏論の主張の理由
(7)選択的別氏のパターン
(8)若干の提案と展望
おわりに
5 琉球先住民族論……渡名喜守太
はじめに
1.現在の沖縄までの経緯
(1)琉球併合
(2)沖縄戦
(3)戦後の琉球「処理」
3.琉球人の意識の問題
4.おわりに──今後の展望──
6 ヤマトと琉球のマツリとマツリゴト……樋口 淳
1.マツリとマツリゴト
(1)卑弥呼と男弟
(2)あの世とこの世をつなぐ
(3)斎宮の制度化とその衰退
2.古琉球の宗教政策
(1)王と聞得大君の伝承
(2)〈古琉球〉のマツリとマツリゴト
(3)オナリとエケリの行方
(4)尚真の八重山征伐と尚清の大島征伐
(5)八重山征伐と大島征伐の帰結
3.国家神道と琉球処分
(1)国家神道の誕生
(2)琉球処分と聞得大君制度の消滅
(3)沖縄神社の創建と御嶽
7 韓国の「市民社会」の現段階とヘゲモニー闘争……丸山 茂樹
はじめに──政治と市民社会と選挙戦──
1.市民社会とヘゲモニー
2.朴元淳ソウル市長の誕生
世代別・男女別・地域別の支持の特徴
3.野党・市民運動の統一候補の実現
4.朴元淳氏の歩みと戦略的思考
5.政党の再編成とヘゲモニー闘争
おわりに──アジアの市民社会の展望の中で
8 「市民社会」論と「世間」論の交錯……古川 純
1.「市民社会」論事始
(1)総論──「市民社会」への問題関心──
(2)「中間団体」の意義
2.「世間」論事始
3.「市民社会」論と「世間」論の交錯を考える
【補論1】 人権の「普遍性」と「文化拘束性」
──アジア人権憲章への可能性──……古川 純
はじめに──問題関心──
1.アジア太平洋地域における人権憲章等の構想に関する論議
(1)アジア・太平洋国内人権機関フォーラム(APF)の年次会合について
(2)アジア太平洋の地域的取極めとアジア諸地域人権憲章・宣言等の動き
(3)香港権利章典(1991年6月8日)
(4)「アジア人権憲章」の採択(韓国・光州、1998年5月18日)
2.「バンコク宣言」の特徴
(1)「バンコク宣言」(1993年4月2日)
(2)人権の「普遍性」と「文化拘束性」
3.中国の改革開放政策および市場経済の活性化と「市民社会」成立の方向
(1)中国の「市民社会」研究
(2)在米中国人(Chinese-American)研究者の「官」「公」「私」3分論
おわりに
4.資料編
【補論2】 日本国憲法の制定と「外国人」問題 古川 純
1.敗戦で植民地を喪失した「日本」の憲法制定過程と「外国人」の権利
(1)外国人の人権保障条項消滅の顛末
(2)明治憲法下の法制──「外地法」の形成、「外地人」と「内地人」──
2.「国籍」と「戸籍」
(1)「内地」居住旧「外地人」の参政権停止・喪失
(2)外国人の人権享有主体性について(学説・判例の「性質説」)
3.戦後補償問題──「戸籍」による差別──
おわりに


9 【対談】山田勝=古川純
──「変革の主体としての社会」論と現代日本社会──
1.井汲卓一論文「変革の主体としての社会」の背景、その要点と狙い
2.コミュニティ論をどう理解するか
3.現代日本社会において「市民社会」論と「世間」論の関係を論じる意味は何か
4.「3・11東日本大震災」後の「市民社会」論の役割を考える